夏の「天空の城」。8月の堀越峠から見る郡上八幡城 〜雲海だけじゃない。緑に浮かぶ白亜の天守を訪ねて〜
- 郡上観光

「天空の城」と聞くと、多くの方が思い浮かべるのは、秋から冬にかけての夜明けでしょうか。冷え込んだ朝、盆地一面に朝霧が満ち、その白い海の上に郡上八幡城の白亜の天守だけが浮かび上がる——あの一枚です。
この眺めを生んでいるのが、国道256号の堀越峠。多くのカメラマンを惹きつけてきた場所であり、「死ぬまでに行きたい世界の絶景」にも選ばれた、郡上八幡が世界に知られるきっかけとなった視点です。
たしかに、雲海の確率がもっとも高いのは晩秋から冬にかけて。けれど、夏の堀越峠にも、その季節にしか見られない景色があります。今回は、8月の郡上八幡城の魅力をお伝えします。

「積翠城」という古い名前
郡上八幡城には、積翠城(せきすいじょう)という古称があります。積み重なる翠(みどり)の山々に抱かれた城、という意味です。
この名前が最もふさわしいのは、実は夏なのではないかと思うのです。
8月の奥美濃は、山の緑がいちばん濃くなる季節。杉の深い緑、広葉樹の明るい緑、その一つひとつが層になって重なり、堀越峠から見下ろす八幡の盆地はほとんど緑一色になります。城山に植えられている木のほとんどはモミジ。秋に「天守炎上」と呼ばれるほど赤く燃える木々が、夏には青モミジとなって天守を包んでいます。その中央、八幡山の頂にだけ、白い天守がぽつんと置かれている。雲海に浮かぶ姿とはまた違う、けれど確かにこの城が「天空」にあると感じさせる眺めです。
秋の写真が「白と白」の静けさなら、夏は「緑と白」のコントラスト。同じ場所、同じ城でも、受ける印象はまったく違います。
夏の朝霧は、雨のあとに
夏に霧が出ないわけでもありません。郡上八幡は、吉田川・小駄良川・長良川という三つの流れが集まる盆地の町です。夕立がしっかり降った翌朝、風がなく、よく晴れた日。地面や川面から立ちのぼった水蒸気が盆地に溜まり、朝のうちだけ薄い霧がかかることがあります。秋冬のような分厚い雲海にはなりませんが、山肌に霧が帯のように残り、天守の足元だけを隠していく——夏らしい、やわらかな「天空の城」です。
狙うなら、前日にまとまった雨が降った翌朝、日の出から1時間ほど。夏は日の出が早いので、5時台には峠に着いていたい時間帯です。ただし、これはあくまで「出たら幸運」。霧がなくても、朝の斜光を受けた緑と白の眺めは十分に美しいので、空振りということはありません。
撮影地・堀越峠についてのお願い
撮影地点は、郡上八幡から和良方面へ抜ける国道256号の堀越峠です。「世界の絶景」に数えられる場所ではありますが、ここは観光用の展望台ではなく、地域の暮らしを支える現役の山岳道路です。
郡上八幡観光協会・郡上市からも、次のお願いが出ています。
●堀越峠(国道256号)は全線が駐停車禁止。 撮影地点は対向車の見えないカーブの途中で、数台停まるだけで通行が危険になります。
●路上に三脚を立てての撮影もご遠慮ください。 走行中の車の前に出てしまった例が報告されています。
時間に余裕を持って出かけ、安全に停められる場所を確認してから構えてください。夏の山道は朝でも路面が湿っています。カーブでの速度は控えめに。
ゆったり郡上八幡に宿泊してから撮影へ
堀越峠へ向かうなら、前夜から郡上八幡に泊まっているのがいちばんです。
日の出前に宿を出て、峠で朝の空気に打たれて、町へ戻る。まだ人の出ていない城下町の水路の音を聞きながら朝食をとる——8月の郡上八幡には、そんな一日のはじめ方があります。
夜には郡上おどりの下駄の音が響き、朝には緑の海に城が浮かぶ。夏の郡上は、思っているよりずっと長い一日を用意して待っています。

